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2017年9月

2017年9月23日 (土)

宿泊税⑦…帳簿記載書類の保存期間と義務違反

先行実施している東京都及び大阪府の宿泊条例と比較する中で、特別徴収義務者が帳簿記載する書類の保存期間については、東京都と大阪府が共に、5年間の保存期間と定めているのに対し、京都市条例では、7年としており、法的根拠について整理しておく必要がある。また、特別徴収義務者がしなければならない義務を違反した場合の罰則規定として、東京都と大阪府が共に、「1年以上の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と条例に定めているのに対し、京都市条例では、「10万円以下の過料を科する」の記載にとどまっている。脱税など地方税法等に係る罰則規定も当然適用されることは理解できるが、条例規定の詳細記載(見える化)も議論をしておく必要があるのではないか。

宿泊税⑥…使途

条例の提案を受けて現在、京都市会において議論を重ねている宿泊税導入によって、どれだけ税収確保が可能となるかの見込額としては、年間約45億円としている。条例施行期日は、総務大臣同意を受けて平成30年10月の施行を予定している。この税収額に対し行政コストは、初期投資は3.4億円としているが、通年では1.4億円の事務的経費が発生しすることから、宿泊税の行政コストバランスを精査しておく必要がある。

特別徴収義務者から納付される宿泊税の使途については、過日の委員会でも議論がなされているが、京都市では、目的税の趣旨を踏まえ条例制定後に詳細は検討するとしている。これまでから観光施策推進施策として、観光地交通対策、ホテル等の宿泊施設の耐震化、観光地トイレの整備、文化財保護、歴史的景観保全、安心安全施策、快適な歩行空間の創出、京都観光の魅力発信など、年間100億円を超える経費を投じて対処してきている。今後、45億円の税収入が見込まれる宿泊税の使途については、これまでの一般会計予算の上積み分として確保するのか、それとも今回の宿泊税による税収額を特化させて、京町家の景観保全と継承、公共交通混雑対策、違法民泊の適正化等、メリハリの利いた目的税予算として確保し執行していくのかが問われており、十分な議論が不可欠である。

宿泊税⑤…税率

京都市の宿泊税の税率は、宿泊料金が20000円未満は200円、20000円以上50000円未満は500円、50000円以上は1000円としている。一方先行実施の東京都では、10000円以下は免税点として宿泊税は0円、10000円以上15000円未満は100円、15000円以上は200円。また大阪府では、10000円以下は0円、10000円以上15000円未満は100円、15000円以上20000円未満は200円、30000円以上は300円としており、総務省の一定の見解はあるものの税率の根拠について明確なものがないため、各都市の事情により差異が生じているのが実態である。こうしたことから、税率の妥当性とともに、目的税の使途との関係性について十分に議論しておく必要がある。

税率に関する京都市宿泊条例の特色は、宿泊料金20000円を一つのラインとして、宿泊料金がそれよりも安いところにも、一律200円を課すものである。この場合、東京都と大阪府と異なり10000円以下の免税点を設定していないため、格安の簡易宿所・民泊に宿泊する方への税負担率が重くなることになる。また20000円以上の宿泊料金階層は、京都市が推進する上質な宿泊施設の誘致方針を踏まえ設定されたものと考えられ、いわゆる高級ホテル・旅館等の施設に対し、宿泊料金の階層に対し、一定のインセンティブが働くことになる。

税率の妥当性については、宿泊税を支払う宿泊者が、支払った税に見合った価値が還元されるかどうかであろうと思われる。つまり宿泊税が高いところは、それなりの対価として、「文化財保護に還元されている」とか、「味わい深い京町家の景観を享受できた」等、ホテルのサービス料とは別の、その価値を実感できるものが妥当であろう。

税の公平公正という視点で考えれば、課税の公平性も必要ながら、還元の公平性も考慮する必要がある。つまり高い宿泊料金とともにそれに見合った宿泊税を支払った方は、京都観光と宿泊への満足度が高まることであり、その満足度の如何によって、もう一度京都市内の宿泊施設に宿泊したいという思いを促し、リピーターを増やすことに繋がり、やがてそれが観光振興へと連動するものであると考えられるのではないか。その意味でも、税率に基づく課税徴収とともに、宿泊税を支払う方への適切な還元に向けて、目的税である宿泊税の使途について見える化し、説明責任を果たすことが重要であろう。

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