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2017年9月

2017年9月23日 (土)

宿泊税④…帳簿書類の記載義務と保存

今回提案されている京都市宿泊税条例では、条例提案に至る中で特別徴収義務者となるホテル旅館業界等の意見聴取を行い、特別徴収に係る事務的な課題について整理されたとしており、できるだけ簡素な事務手続きが求められている。条例では、第11条に「特別徴収義務者に係る帳簿の記載事務等」として記載されている。この点については、帳簿の形式はどうか、京都市としてひな型はあるのか、こうした事務的経費に対する支援等について質疑をしたところである。現在の企業会計事務のほとんどはICT化となっているが、この点についての記載が京都市条例では見あたらない。先行実施都市の条例を比較すると、大阪府の条例では、ICT化の社会に対応するため、第15条及び第16条に「帳簿及び書類の電磁的記録による保存等」「帳簿書類の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存等」と記載されている。京都市の宿泊条例が今後導入を検討している自治体の模範となるためにも、帳簿書類のICT化に係る事項について整備する必要性がないのかどうか議論する必要性があります。

宿泊税③…罰則

宿泊税条例案では、宿泊税をいわゆる代理受納する特別徴収義務者に対して、税法上の罰則を規定している。納付に関して延滞金、10万円以下の過料の他に、地方税法に規定する検査拒否や脱税等に対する罰則、過少申告や不申告による加算金等が適用されることになっており、特別徴収義務者としての宿泊施設に対する税の取扱い上の罰則は明確である。

しかし、旅館業法違反行為となっている宿泊施設事業者に対して、営業に関わる何からの罰則を科する担保が現時点では確保されていない。違法民泊の場合、旅館業法の無許可営業という違反行為もあれば、旅館業法は許可されているが、法の運用上での違反行為という2つのパターンが考えられる。京都市の宿泊計画の方針から言えば、どこまでも違法民泊の営業を許さないという断固たる対応が不可欠である。その意味では、行財政局と保健福祉局、観光産業局、消防局、都市計画局等、関係局の連携強化が不可欠である。

また、これは大きな課題ではないと思われるが、宿泊税を拒否し支払わなかったものへの罰則の考え方の整理である。条例規定では、第3条で納税義務者等と規定されているが、宿泊者に対する納税義務について明記されていない。条例が制定され、来年10月1日からの施工見込みの中で、約1年間でこうした対策が厳正かつ適正にできるかどうかが課題となる。

宿泊税②…特別徴収義務者の指定

宿泊税は、京都市内の宿泊施設に宿泊した観光客等が京都市に支払う目的税である。その税の徴収及び納付義務を負うのが旅館業法に規定されている事業者、また住宅宿泊事業法に規定されている事業者である。旅館業法においては営業に関して許可制であり、住宅宿泊事業法では事業者の届出制、管理営業者に関しては登録制となることになる。こうした中で、いずれの宿泊施設に宿泊した観光客に対して徴収した宿泊税が適正に納付されるかどうか、またそもそも本来特別徴収義務者となるべき事業者において違法民泊や、存在不明なままの施設での営業等を営む事業者に対して課税徴収義務を課せるかどうか、心配されるところである。

京都市の現状として、許可施設約2500施設に対して仲介サイト等に登録されている宿泊類型施設は約3000施設ほどある。こうした現状を踏まえれば、(1)条例施行によって宿泊税を支払う義務が宿泊者に課せられることになるが、特別徴収義務者からもれなく京都市に納付されるかどうか。(2)特別徴収義務者登録漏れ、徴収漏れ、納付漏れが回避できるのかどうか。(3)そもそも違法民泊事業者に、公平公正な条例に即して京都市の課税徴収の役割を担わさせることの公平公正な視点や道義的問題がないのかどうか。

東京都は民泊への宿泊者に対しては課税対象除外としている。また、大阪府では民泊への宿泊者に対して課税徴収対象としつつも、違法民泊での宿泊者に対しては課税徴収対象除外としている。しかし今回の京都市の宿泊税は、すべての宿泊施設に対して課税徴収の義務を課すものであり、多角的な議論が求められるところである。

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