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2023年7月11日 (火)

聴くチカラ

人間社会におけるコミュニケーションは、言語・聴覚・視覚を通じて成り立っている。この3要素をもとに、人は相手の思いや考えを察知し、良好な関係を築いたり、逆に拒絶したりし、バランスをとりながら関係を維持している生き物である。
幼少の頃、SFに興味を持ったことがあったが、その時、宇宙人と称される想像絵のほとんどは、頭が大きく、あごは小さく、目は白目がなく真っ黒で大きく、口は米粒ほどという、イカの化け物のようなものであった。当時、人間が進化した未来で、何でこんな変てこな姿をしているのだろうか?と不思議に思った記憶がある。しかし「宇宙人は、私たちの未来の姿」と考えれば、当時の宇宙人の姿は、今から思えば確かな科学的根拠から導き出された結果の産物だったのかも知れない。何か現実離れしている過去とは異なり、今の時代の状況を見れば、宇宙人の姿は確かな実感を伴って迫ってくる。例えば、目は、黒目の瞳と、白目の部分に分かれているが、白目は、人間がコミュニケーションを図る上で、顔や目の表情を多彩に演出する役割を担っていると言われているが、メールやSNSでやりとりが横行する現在では、すでに無言(言語のみ)でコミュニケーションが成立している。その意味で、白目が必要でなくなり、それは同時に、直接話すことも必要がなくなることから、口角や舌も使わないため口周りの筋肉も退化していくのではないかとの仮説も成り立つのでは。一方、頭脳だけは活発化することは間違いなく、今後、AI(人工知能)によってさらにコミュニケーションのカタチが模索されていくだろう。
アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは、1971年に、人のコミュニケーションに関する研究において、「メラビアンの法則」という心理学説を発表した。この法則は、別名「7-38-55のルール」とも呼ばれ、ビジネスマンのスキルアップにも活用されている。
メラビアンは、人間は他人とコミュニケーションを取るとき、言語・聴覚・視覚の3つの情報から相手を判断していると仮説を立て実験を行った結果、言語・聴覚・視覚にそれぞれに伝わる度合いや割合があることを明らかにしている。すなわち、言語は7%、聴覚では38%、視覚では55%というのである。しかし一方で、言語や聴覚が、視覚と比較して数値が低くなっている研究が、一面的に切り取られ「人は、話よりも、見た目や表情で他者を判断する」という一部本来の主旨でない解釈がされたことは注意が必要である。コミュニケーションは、この3要素のバランスで成り立っていることを彼は指摘したかったことを忘れてはならない。
言語・聴覚・視覚の3要素の中でも特に重要視されるのが聴覚である。フランスの作家は「声は第二の顔である」と言ったが、姿や形はごまかせても、声はごまかせない。イギリスの科学雑誌ネーチャーに、「なぜメディア情報に人々は騙されやすいのか」という実験結果が掲載されたことがある。検証実験は、新聞ラジオテレビを使って、同一人物が真実を語るインタビューと、嘘をついているインタビューを並べて掲載、放送し、読者や視聴者に嘘を見破ってもらうというものである。その結果は、人々が一番騙されやすいのはテレビ逆に4分の3もの人が嘘を見破ったのは、ラジオであった。新聞はその中間であったというのである。
「声こそ真実」であるが故に、時代が大きく変化したとしても人と人とのコミュニケーションのカタチは、「声」にあることを肝に銘じたい。その声を聴くチカラが一層求められる時代である。

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