アンガーマネジメント ~怒りから笑顔へ~
介護ケアとアンガーマネジメント
私は、32年間の市議会議員の活動の最終年度となった令和4年度の政務活動(政策調査研究)のテーマを、「認知症の人と家族」に焦点を当て、その課題研究を行いました。そのテーマにした理由は、3つあります。1つは、国が認知症対策基本法を新たに策定する動きが加速していたこと。2つは、自身の周りに認知症の方々が増えてきたこと。3つは、認知症問題が現実の問題として近い将来誰もが向き合わなければならない課題であることです。私たち地方議員に寄せられる相談の内容は、その時代における生活者の悩みを浮き彫りにするものであり、深堀すれば時代の底流に流れる社会的課題を深堀する入口にもなり得るものと感じてきました。事実、介護や認知症ケアに悩む家族からの相談も急増してきています。そうした中、今、認知症の人を介護する家族へのアンガーマネジメントが注目されているようです。
アンガーマネジメントは、怒りの感情をコントロールするトレーニングとして、1970年代に米国でスタートしたとされる犯罪者の矯正プログラムと言われています、現在では、スポーツ、教育、企業、コミュニティ等、幅広い分野で活用されるようになってきています。アンガーマネジメントの専門講義をされている横浜市立大学医学部看護学科講師でアンガーファシリテーターの田辺有理子氏によれば、介護者の「笑顔」の重要性を指摘されています。人間の感情には、喜び・嫌悪・不快・怒り・悲しみ・驚きの6つの要素があり、認知症の人は、喜びの感情は認識しやすいようですが、他の感情を読み取る力が次第に衰えていくとのこと。だからいつも笑顔でいれる自分をつくることが大事ということになりますが、しかし現実には介護者が笑顔を維持することは、相当のエネルギーが必要です。
田辺氏は、「楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいのだ」との哲学者であり心理学者であるウィリアム・ジェームスの言葉を紹介しつつ、介護疲れ等による自分のイライラを解決し、認知症本人も笑顔でいられる日常をつくるための「笑顔の4要素」を提起されています。それは、❶笑顔で過ごす時間をつくる、❷雑談をしてみる、➌昔の話をしてみる、➍簡単な作業を一緒にする、というもので自然と対処できる力を身に着けたいものです。
昨年度の政務調査活動の報告者は既に市長に提出済ですが、今思えば、家族支援策の調査研究においてアンガーマネジメントの必要性について調査が不十分であったことは否めません。今後、認知症の人と家族を支える地域社会の構築に向けて、今後も幅広い知見を学び、認知症の人と家族支援に対するアンガーマネジメント政策の可能性を更に研究していきたいと思っています。
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