リンカーン
先日、アメリカ合衆国第16代大統領リンカーンの伝記映画「リンカーン」を鑑賞する機会を得た。スピルバーグが監督を務め、音楽は、ジョン・ウイリアム。第85回のアカデミー賞では、作品賞を含む12部門でノミネートされ、主演男優賞とアカデミー美術賞を受賞している名作である。
南北戦争の終結と、奴隷制解放を賭けて、共和党と民主党の下院議会で戦いが舞台である。アメリカ合衆国の歴史上初めての共和党所属の大統領であるリンカーンは、奴隷解放の父と言われ、「人民の、人民による、人民のための政治を地上から絶滅させない」という有名なゲティスバーク戦争墓地での演説は、歴史的に光彩を放っている。現代の政治演説は、このリンカーンの演説が源だとも言われている。この演説は、1863年7月であるから、まさに今年の7月で150年目にあたる。
映画では、、奴隷解放のため憲法改正に挑む共和党のリンカーン大統領が、議会の3分の2の賛成票を確保するため、民主党議員にロビーストを通じて工作するが、最後は大統領自らが訴えかける。奴隷解放反対の民主党の下院議員が、「誰人も法の下に平等である」との共和党長老の演説に、自らの良心が突き動かされ、最後には勇気ある賛成票を投じる場面は、感動的である。
私も政治家の一人として、「議員一人の決断力」、「1票の重み」を改めて痛感した映画である。同時に、日本でも今、憲法改正にかかわる手続き法の改正として憲法第96条が取りざたされているが、まさにこのリンカーンの映画から、「何のための改正なのか」というスピルバーグのメッセージが聞こえてくるようである。
コメント