熟議デモクラシー(厚生委員会の請願審査に思う)
熟議デモクラシーという耳慣れない言葉は、政治の研究者の間で言われている言葉で、民主主義の今後のあり方を示唆するものである。
私は以前、『第三の波の政治』や、『2010年革命』の書籍を感慨深く読む中で、21世紀の政治の方向に大きな変化があることを直感した。また地方議員として現場で活動し、市民と対話する中でさらに確信をもって時代の流れを感得したと言ってもいいだろう。第三の波の政治の結論は、①半直接民主主義、②決定権の分散、③少数意見の尊重という理念をもつ新たな政治システムが求められるとしている。国会にせよ地方にせよ議会は、多数決という民主主義のルールによって一定の政策決定を行う場であるが、はたして第三の波の政治に示された3つの視点は今日、持ち合わせ包含しているであろうか。
情報化社会の進展により、私達の生活のスピードは益々速くなっている。ネット政治の中でも議論および結論はスピードが要求されている。しかし欧州では今、議論をより徹底して行うことを模索し始めていることに注目したい。日常生活に密着した問題は、徹底した熟議が求められるという時代に直面していることを政治家は自覚しなければならない。
今や、わが国でも戦後のイデオロギー政治は冷戦崩壊とともに消滅している。むしろ必要なのは新たな政治システムの構築である。地方議会で活動する政治家として、熟議デモクラシーは極めて重要な視点である。
今、厚生常任委員会で、請願審査を行っている「公衆浴場の存続」問題は、まさにこの視点を抜きにには語れない。議会は市民に透明でオープンな議論をすることは当然である。そして利害が絡む問題を合意形成を持って創り上げる努力をしなければならない。従来の請願審査とは異なり、新しい時代の大きなうねりが顕在化している象徴的な問題と捉えることが重要である。議会は今後、高い見識と責任ある対応が求められる。
------------------------------------------
作品名:戦うこころ
コメント