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2023年4月

2023年4月29日 (土)

選択のカタチ

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コロナ禍を経験した中での最初の統一地方選が4月9日(前半戦)、23日(後半戦)が終了した。
選挙結果の分析は、今後多様な視点で論議されることになると思うが、コロナ前とコロナ後では、明らかに有権者の意識に変化が起こっているのではないかと感じている。しかしそうした兆候は、すでにコロナ前から地殻変動の兆しがあったのかもしれない。むしろ今回の選挙で顕在化したとみるべきだろう。政治の動向の起点になるのは、有権者に最も身近な地方政治であり、地方選挙の動向は、今後の日本の政治を占う大きな要素であるとすれば、今回の統一地方選挙は、我が国の政治の転換点となるに違いない。有権者が投票する権利すなわち「選択」のカタチにフォーカスすれば、次世代の若い候補者が多く出馬したことや、女性候補者も増加したこと、さらに多様な思想信条をもつ候補者も多くなった感が強い。こうした流れは、今後も一層加速することは間違いないだろう。日本も遅まきながら世界のトレンドともいえる「多様性」の時代に入ったと断言できる。

今回の選挙の結果分析の一つには、政党への期待度と、候補者本人の魅力等を総合的に判断して選択したことによるものであることは違いない。政党を選択する際には、政党の理念、政策、構成団体等を基準に判断する場合が多いが、安定的な政治が続いているとは言え、未来への安心を担保できないでいる日本政治の閉塞感を変えてほしいという民意が今回の選挙結果を生じさせたことは否定できない。また、有権者の投票行動が、地縁・血縁を軸とした「集団」を軸とするものであったこれまでの時代から、「個人」を軸とする政治へとシフトし始めてきたことも要因の一つであろう。端的に言えば、選択する方も、選択される方も、「選択のカタチ」が大きく変わることに、今後どう対応していくかが問われる時代に突入したということである。

国分寺市議会議員の選挙において、「投票率が日本1位になったら、まちはどう変わるだろう」というテーマに、公職選挙法による公報以外に、有権者が選択する幅と質を高めるために、全候補者の情報を公平に提供している「国分寺の投票率を1位にプロジェクト」が注目されている。
例えば、現職候補であれば、過去の一般質問の実績をまとめてデーターベース化し、新人候補では800文字でのアン王ケート結果の提供、候補者全員へのインタビュー動画を公的な選挙公報と併せ情報提供するものだ。一方先日、泡沫候補にもフォーカスしているフリーランス記者の取り組みが報道されていたが、これも「多様性」の時代を象徴するものである。こうしたローカル政治プロジェクトの発芽は、今後も地域の民度に即して発展していくだろう。
その地域の未来と託す大切な1票。その1票の選択肢を正しく提供できる仕組みとして歓迎でべきものである。選挙は、選ばれる側と選ぶ側との共同作業によって成り立つものであり、選択のカタチもこれから変化を余儀なくされてくるだろう。多様性の時代における政治家のあり方はどうなるのか、注目すべてき課題である。

2023年4月22日 (土)

アンガーマネジメント ~怒りから笑顔へ~

介護ケアとアンガーマネジメント

私は、32年間の市議会議員の活動の最終年度となった令和4年度の政務活動(政策調査研究)のテーマを、「認知症の人と家族」に焦点を当て、その課題研究を行いました。そのテーマにした理由は、3つあります。1つは、国が認知症対策基本法を新たに策定する動きが加速していたこと。2つは、自身の周りに認知症の方々が増えてきたこと。3つは、認知症問題が現実の問題として近い将来誰もが向き合わなければならない課題であることです。私たち地方議員に寄せられる相談の内容は、その時代における生活者の悩みを浮き彫りにするものであり、深堀すれば時代の底流に流れる社会的課題を深堀する入口にもなり得るものと感じてきました。事実、介護や認知症ケアに悩む家族からの相談も急増してきています。そうした中、今、認知症の人を介護する家族へのアンガーマネジメントが注目されているようです。

アンガーマネジメントは、怒りの感情をコントロールするトレーニングとして、1970年代に米国でスタートしたとされる犯罪者の矯正プログラムと言われています、現在では、スポーツ、教育、企業、コミュニティ等、幅広い分野で活用されるようになってきています。アンガーマネジメントの専門講義をされている横浜市立大学医学部看護学科講師でアンガーファシリテーター田辺有理子氏によれば、介護者の「笑顔」の重要性を指摘されています。人間の感情には、喜び・嫌悪・不快・怒り・悲しみ・驚きの6つの要素があり、認知症の人は、喜びの感情は認識しやすいようですが、他の感情を読み取る力が次第に衰えていくとのこと。だからいつも笑顔でいれる自分をつくることが大事ということになりますが、しかし現実には介護者が笑顔を維持することは、相当のエネルギーが必要です。

田辺氏は、「楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいのだ」との哲学者であり心理学者であるウィリアム・ジェームスの言葉を紹介しつつ、介護疲れ等による自分のイライラを解決し、認知症本人も笑顔でいられる日常をつくるための「笑顔の4要素」を提起されています。それは、❶笑顔で過ごす時間をつくる、❷雑談をしてみる、➌昔の話をしてみる、➍簡単な作業を一緒にする、というもので自然と対処できる力を身に着けたいものです。

昨年度の政務調査活動の報告者は既に市長に提出済ですが、今思えば、家族支援策の調査研究においてアンガーマネジメントの必要性について調査が不十分であったことは否めません。今後、認知症の人と家族を支える地域社会の構築に向けて、今後も幅広い知見を学び、認知症の人と家族支援に対するアンガーマネジメント政策の可能性を更に研究していきたいと思っています。

2023年4月10日 (月)

個の尊重と多様性の結束 

~2023京都市議会議員選挙に思う~

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4月9日に執行された統一地方選挙(府議会議員選挙、市議会議員選挙)は、次の京都の10年に向けた新たな1ページが開かれる選挙戦となった。京都市会では、定数67に対し、自民19、共産14、公明11、維新10、京都党5、国民3、立民2、無所属3と、京都府議選と併せ、いずれも選挙前と比較し維新が大きく躍進する結果となった。
今回の統一選は、コロナ禍を経験した中ではじめて迎える統一選となったが、山積する市政の課題や未来の政策争点等も当然問われるものでもあった。しかし時代の大きな転換点となる今回の選挙は、一重深く考えれば、社会の底流に流れている民意を深く見極め新時代における民主主義のあり方を考えることが必要である。政治学の専門家でない私としては、今後、様々観点から多面的な分析を待つしかないが、30年近く地方政治に身を置いてきた一人として今回の選挙で直感的に思うことは、民主主義が「個の尊重」の政治を更に希求しているのではないかということである。それは今回の選挙結果を見ても明らかなように、有権者が求める「個の尊重」の政治が、必然的に多党制の議会構成へとなっている。

今、改めて1980年代に、21世紀の民主主義や政治の方向を示した未来学者アルビン・トフラーの名著「第三の波の政治」を読み返しているが、そこには「個の尊重」の意味について鋭い知見が示されている。著者は、情報革命社会(第三の波)における政治システムの三原理として、①半直接民主主義、②決定権の分散、③少数意見の尊重を挙げている。1980年代当時の日本社会システムでは受け入れられない論理だったと思うが、今やマイノリティパワー(少数意見、個)は時代の今や世界の潮流となっている。
民主主義を支える有権者の側が、「個の尊重」の政治を求める中、政治家や政党は、個人の意見や意志が尊重される舞台を用意する必要があるが、政治家や政党にそうした視座を持った運動論や政策論が展開され日常的に有権者に届いているかが問われえば課題は多いと言わざるを得ない。その意味で、今回躍進した政党は、そうした「個の尊重」の政治を意識するかしないかを問わず持ち合わせていたのではないか。逆に退潮傾向にある政党は、「個の尊重」の政治とは真逆の「集団の尊重」の政治を重要視する選挙戦に終始した結果によるところが大きいのではないか。

トフラーの第三の波の政治における三原理は、40年以上前に示されたものだが、未来学が我が国では育たない土壌も相まって、残念ながらこれまでわが国では深く議論がされてこなかった。
しかし、デジタル社会の加速化は、政治のあり方、民主主義のあり方を大きく転換させていく可能性を秘めており、「個の尊重」の政治の流れも加速していることは間違いない。

5月には選挙で選ばれた議員により、次の京都の10年の道筋に責任を持つ議会が新たにスタートする。「個の尊重」により多党制の議会で真摯な言論戦を活発に展開されることを期待する一方で、少数意見をまとめ上げる合意形成のチカラも、それぞれの会派に求められることになる。不毛な対立を乗り越え、京都市の未来のために、「多様性の結束」のもとに合意形成は図り市政発展に貢献していただきたいことを願うばかりである。

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